ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】ちゃんとおかあさんやってるの?

ここ数日、夜中の3時より前に布団に入ったことがない。

2週間ほど前から途中参加したプロジェクトに重大な問題が発生していることが発覚して、隣部署も巻き込んで、チーム総出で火消しにあたっているからだ。きちんきちんと対応していれば発生しなかった仕事が、きちんきちんとやっていなかったばかりに雪だるま式に大きくなってから見つかった。ミスの所在はさておき、とにもかくにも連帯責任である。だが大きくなりすぎた問題に対してとにかく当座をしのぐことしかできず、もう毎日が(よくない意味で)お祭り騒ぎだ。

 

夜中遅くまで対応に追われているときに、隣部署の男性社員に声をかけられた。

たしか息子とひとつふたつ年の離れた女の子がいたはずだ。仕事で帰れない彼も、彼が帰ってこないことでしわ寄せのいく彼の奥さんも大変だろう。

「お互い大変ですね」と口を開きかけた私は、彼の次の一言で出鼻をくじかれる。

「こんな時間まで仕事をしてて大丈夫なの?お子さんはちゃんと見てるの?」

眉根を寄せて攻める口調の同僚に閉口する。共働きの家庭が少なくないこのご時勢でも、「おかあさん」であるというだけで、職場ですら母親の責務を果たせと迫られるのだ。

小さなこどもがいるのは同僚だって同じなのに。

 

共働き家庭の男性が同じような言葉をかけられる機会は、私の周囲では女性よりぐっと少ないように思う。各家庭のバランスや分担があるのに、当然おかあさんの仕事でしょと言わんばかりの言葉をかけられると心がゴシゴシ擦り減っていく。

 

毎日保育園のお迎えにいき、息子の夕飯、お風呂を終えて、息子の寝かしつけのタイミングか寝かしつけた後のタイミングで帰宅する主人にバトンタッチ。再び仕事に戻って夜半まで仕事をし、翌日のために家事をすませて布団にもぐりこんで泥のように眠る。大抵3時をまわっている。翌朝はまた保育園に送っていき、仕事がはじまる。

頑張って頑張って頑張ってるのに。「頑張ってるね」や「お疲れ様」の前に「ちゃんと育児してんのか?」がくるなんて世知辛い。

褒めてくれ、特別扱いしてくれなんて言わないから、同じ立場の同僚として扱ってほしいとただただ思うばかりだ。

【育児】それはさぞかし素敵なもので

「あったぁー!」

息子がリビングの床から何かを拾い上げ、きらきらした笑顔でつまみ上げた。ずいっと差し出す小さな手。小さな人差し指と親指で、器用につままれたその「何か」はかなり小さいのか、こちらからはよく見えない。

得意げに「あった!あった!」と連呼する息子に近寄って、しゃがみこんで目線を合わせ「なにを見つけたのかな?かあちゃんにも見せて♪」と言いかけた私は、その何かの正体をとらえて「ひえあ"ぁ~~!!」と情けない悲鳴をあげた。

 

虫。虫である。紛れもない虫である。

かわいい息子の手につままれているのは、虫の死骸であった。

もちろん芋虫とかカナブンとか、口に出すのも憚られる台所の悪魔などではなく、ほんの小さな(というにはちょっと大きな)羽虫であるが、息子の指につままれ至近距離でみつめたその姿はなかなかにインパクトが強かった。

悲鳴をあげながら息子を抱き上げ、すぐに洗面所で手を洗わせる。息子は何を思ったか「ばばーい!(バイバイと言いたい)」と哀れな虫が流れゆく排水溝に手を振っていた。

 

これまで息子の「あったぁ~!」は、大抵どんぐりとか、きれいな色の葉っぱとか、家の中で行方不明になったおもちゃの部品とか、そういった「ちょっといいもの」を見つけたときに発せられる声であった。しかしこの度どうやら「虫」も彼にとってのいいものカテゴリーにもれなく登録されていることが判明した。

 

この日以来、公園だろうと家の中だろうと、息子が「あったぁ~!」と声をあげると心臓がびくうっ!と飛び跳ねてしまう。

そうだろうそうだろう、さぞかし素敵なものを見つけたのだろう。

ちょっとしたホラーだ。息子の声が嬉しそうな分だけ、息子の指の間に挟まっている「何か」への恐怖度は跳ね上がるのだった。

【今週のお題】その美味さは陣痛をも超えて

痛い。陣痛の合間に差し出されたストロー。痛い。力の入らない体を起こしてなんとか吸い付く。痛い。もったりとしたチョコレート風味が口いっぱいに広がる。とんでもなく甘い、濃い、美味い。ああ、求めていた味です。あああああああ痛い痛い痛い痛い、美味い痛い。

一瞬、痛いのを忘れて「美味い」が脳みそを支配しました。ありがとうハーゲンダッツ

 

ああ、思えば体重制限の厳しい妊娠生活だった。先生はとっても厳しかったけれど「陣痛が始まったらいくらでもアイス食べていいから!!」という言葉を胸にこの日まで耐え忍んできた。一体何度、お腹がぐーぐー鳴って眠れない夜を過ごしただろう。

陣痛の始まりと共に主人に「いたたた・・は、ハーゲンダッツを・・!痛い・・い、いいからハーゲンダッツを・・!」と言い募り、病院へ向かう道すがら最優先で入手して息も切れ切れ産院に駆け込んだのだった。

ところがいざ産院に入院してみると、部屋には冷凍庫がなかった。

冷凍庫が、なかった。

先生が「陣痛中のアイス」をやたら推してきたので確認もしていなかった私が悪いのだが、アイスがあるのに冷凍庫がないなんてひどい。あんまりである。みんな馬鹿正直に陣痛中にアイスを食べようとはしなかったのだろうか。

主人が買い込んだハーゲンダッツは、申し訳なさそうに冷蔵庫で溶け切っていた。もうでろっでろ。

 

でろでろのアイスの存在を思い出したのは、陣痛から丸一日が経過しようというときだ。なかなかお産がすすまず、痛みで食事もとることができなかった私は文字通り疲労困憊であった。このまま長引けば、陣痛が弱くなり危険かもしれない・・と心配した助産師さんが「いいから何でもいいから食べなさい!お腹に入れなさい!」と叱咤激励し、思い出したのがそのアイスである。

付き添ってくれた主人が、すっかり溶け切った液体状のアイスにストローをさしてくれた。そこで冒頭にもどる。カップ4つをぺろりと平らげて(吸いつくして)しまった。

おかげさまで母子ともに無事なまま、息子はこの世に誕生した。

 

それまでハーゲンダッツはいつだってバニラ派だったけれど、それからはチョコレート味を贔屓にさせてもらっている。しっかり冷凍されてスプーンがささらないくらい固い状態が私好みだ。

にもかかわらず、それ以降に食べたどのチョコレートハーゲンダッツも、あのときの美味しさを超えられない。あんなに美味いチョコレート風味には、もう生涯出会えないと思っている。

 

今週のお題「チョコレート」

【絵本紹介】のりかえでんしゃ

今まで読み聞かせてきた絵本の中で、感銘を受けた絵本の紹介です。

 

hon.gakken.jp

 

サイズ:17.5×17.5cm

ページ数:40ページ

初版: 2018年08月30日

発行:学研プラス

 

よくある乗り物しかけ絵本かと思いきや、最後にちょっとした工夫があります。まず間違いなく、すぐに二週目を読んでしまいます。この絵本に関しては、ネタバレになると楽しみ5割減なので控えます。

シンプルなしかけ絵本。男の子がお父さんと一緒に旅行にいく際に、7種類ほどの乗り物をどんどん乗り換えていくというストーリー。感情表現などはなく、淡々と乗り物とその効果音(ぷるるる、ぷわーん、ぽっぽーetc)だけですすみます。太めの線とはっきりした色使い、かつ文章量も少ないので、3歳以上向けではあるものの低年齢でも目で追いやすく楽しめるとおもいます。(息子は1歳半ですが楽しめました)

しかけを上手く利用して遠近感を表現しているので、モノの観察にも。

 

ご参考までに。

【育児】おまけじゃなくて

冷蔵庫を開けておや、と思う祝日の朝。朝食に活躍するバナナも食パンもヨーグルトも切らしていることに気が付いた。そんなときに限って冷凍ご飯も切らしている。息子が起きだすまでに買いにいくほどの時間はなさそうだ。ご飯を炊くのも間に合わないだろうし。

 

保育園に通い始めてからというもの、休日には息子も寝坊をする(起きていても布団の上でごろごろ転がって、私にしがみついてニヤニヤ笑っているときもある)。規則正しい生活をさせましょうとは事あるごとに言われるけれど、我が家はゆるゆるだ。

毎日保育園に頑張って通う息子にも、大人と同様に休息が必要だと思うから、わざわざたたき起こすことはしない。のんびりと起きだして、のんびりと朝食を食べて、散歩にいくこともあるし「おかあさんといっしょ」を一緒に見ることもある。もうすぐ昼という時間に主人が起きだしてくるまで、土曜日や祝日の朝は穏やかに過ごす。主人が起きだして来たら昼食の準備に、翌週の夕飯つくりおきに、と忙しくなるので、この時間がいちばん休日らしい。

そんな寝坊助もさすがにそろそろ起きだしてくる頃だ。最近は寝起きでも食欲旺盛なので、朝食がさっと出てこないと機嫌を悪くするだろう。きょろりとキッチンの戸棚を見渡すと、しまいこんでいたホットケーキミックスを発見した。

 

うーん・・ホットケーキ。前回食べさせたときにはかなり不評で、大半を食べ残されてしまったメニューである。とはいえ他に代替できるものもないので、不安に思いながらも冷蔵庫から卵を取り出した。時間があるので4cmくらいのミニサイズをたくさん焼いてやろう。

 

顛末はというと、びっくりするほどホットケーキは好評であった。皿に盛ってやったミニサイズのホットケーキをみるや「あっぱいーっ!(いっぱいと言いたい)」手を叩いて大喜びし、お替りまで要求された。手でつかんで口に持っていくときに一枚一枚「ちぃっ!(小さいと言いたい)」と教えてくれる。

そういえば前にホットケーキを作ったときは、大人サイズで焼いた後、切り取ってあげたのだ。それを覚えていたのかもしれない。「自分用」に小さく焼かれたホットケーキが「大人のおまけ」でないことを敏感に感じ取ったのかもしれない。

息子のおこぼれに与ったミニサイズのホットケーキは端が少しかりかりになっていて、スナック感がつよく感じられ、まさしく「息子用」の味がした。

【絵本紹介】パンふわふわ

今まで読み聞かせてきた絵本の中で、感銘を受けた絵本の紹介です。

 

bookclub.kodansha.co.jp

作:彦坂 有紀 作:もりと いずみ

出版:2019年09月12日

サイズ:B24取

ページ:18

 

本物のようなパンの絵が描かれている絵本。ふわふわ、さくさくなどの擬音に親しむのにぴったり。文章量は0歳児向けですが、我が家ではパンを食べ始めた現在(1歳半)の方がウケがいいです。

いちばん気に入っているのは作中に登場するクリームパン。息子のふくふくとした手に似ているので。「〇〇くんのおててみたいなクリームパンだね」と言いながら、パンに見立てて手を食べるふりをすると大喜びします。

パンの種類と擬音しか登場しないので、ちょっと単調かと思いきや、落ちには勢いがあります(ばりばりばりっ!とお子さんを食べるふりをすると盛り上がります)。

 

ご参考までに。

【育児】リピートアフタミー

息子の口数がぐぐっと増えて、起きているときは四六時中なにかブツブツと口に出している。

独特の節がついてうたっているように聞こえることもあれば(裏声のように高い声で抑揚つけてしゃべる。お風呂場で聞くとちょっとオペラ歌手みたい)、呪詛のように懇々と床に向かって話し続けること(低い声なのに、いきなり「きえーっ!」などと奇声をあげるので本当に心臓に悪い。その鬼気迫る風情はイタコさながらである)もある。

いままさに成長しているんだなあとしみじみ見つめていたら、暇そうな私を構ってやろうと思ったのか、突然私の発言をオウム返しで真似始めたのだ。

「これは赤だねー」「あっかー!」

「そっちは青だねー」「あっおー!」

「バスきたよー」「ダッチュ―!」

「やったー!」「ったあー!」

舌足らずなオウム返し。

 この週末にいきなり始まったのでとても面白可愛くて、金曜の夜からずっとオウム返しを求めて話しかけ続けた。すると日曜の夜にはうんざりしたように「ちあうっ!(違うと言いたい)」と無視されてしまった。残念でならない。

残念ついでに、もうひとつ。

「あったかいねー!」「あったいー!」などとあまりに素直にオウム返してくれるので、ムフフと思いながら「だいすきよー!」と話しかけてみた。母の心は息子からの「だいすき!」待ちでうきうきである。

ところが、それまで調子よく受け答えしていた息子は急に真顔になり、手元のおもちゃで遊ぶのに集中しはじめてしまった。すさまじい切り替え。さっきまでノリノリでオウム返ししてくれたではないか。「オウム返しでもいいんだよ、大好きは減るものじゃないんだから!」と詰め寄るもなしのつぶてである。

しかし、そんな母のよこしまな思いを感じ取ったのか息子は「大好き」系ワードを絶対にリピートしてくれることがなかった。強い意志を感じる背中に向かって、「かあちゃんは大好きだからねぇ~」とつぶやく夜。

どんなにツンデレな君でもかあちゃんは大好きです。