1歳5か月を迎えた息子は発語が早いほうではないようだ。しかし日々の様子から、どうやらこちらの言うことは伝わっているようなので、とくに焦る気持ちもなくのんびりと見守っている。
彼の発する意味のある言葉はまだ数えるほどだけれど、大好きな【バス】【トラック】【電気(なぜか)】の他に、最近は【ありがとう】が加わった。
といってもはっきりと「ありがとう」と言えるわけではなくせいぜい「あーいーっ」と言っている感じなのだが、使っている場面をみるにそれはどうやら彼なりの「ありがとう」なのだった。
落ちているおもちゃを拾ってもらう、お菓子の袋をあけてあげるなど、私がしてあげたことで彼が嬉しいと感じると「あーいーっ」と言ってもらえる(ちなみに耳掃除をしてあげると拍手をしてもらえる)。
しかし最近、彼の「ありがとう」には新たな用法が加わった。何かしてほしいときにこちらをじっと見て「あーいーっ」というのである。小さなことだ。例えば自分では完成できないパズルを代わりにやってほしい、とかしまじろうのDVDをつけてほしい(彼はすでに立派なしまじろう信者である)とか。はじめのうちはいい間違いかなと思っていたのだが、同様の場面が何度も発生したので、どうやらこれまた彼なりに「ありがとう」を先払いすることで自分の望みをかなえてもらおうと考えてやっているようであった。
これに気付いた時には少しおかしくなってしまった。
「きれいに使っていただいてありがとうございます」を連想してしまったからである。駅のトイレなんかに貼ってあるアレである。
先手を打って感謝の意を示されてしまうと人間なぜか従ってしまいたくなるものだ。彼の言葉の使い方はとても理にかなっていて正しい。
けれどいくら感謝を先払いされたところですべての要求がかなえられるわけではない。我が家ではしまじろうのDVDは1日1本までと決まっている。
今日の分は終わりだよ、と告げるとちょっと不機嫌そうにうなるのだが、しぶしぶ納得する。しかしもしかしたら今日はやってくれるかな?とでもいうように、今日も息子はしまじろうのDVDを指さし、感謝を先払いで押し売りしてくるのであった。
「あーいーっ!」