息子はきらきら星の歌にあわせて、両手をひらひらと動かしている。おべんとうばこの歌に合わせておにぎりを食べる真似をして、幸せなら手を叩こうの歌に合わせて、幸せそうに手を叩いている。弾けんばかりに笑い声をあげながら。
ついこの間まで私は、彼が将来音痴になってしまうのではと、ちょっと心配していた。というのも私自身がひどい音痴だから。毎日一緒に歌を歌っているので、私のひどい音程が彼に移ってしまうのではないかと思ったのだ。
ところが最近、主人に「歌がうまくなったね」と褒められた。
そうか、毎日童謡をきいて何度も歌っているうちに上手になってきたに違いない。それなら彼が音痴になることも、そんなに心配せずともいいだろう。一安心だ。
数日後、主人が休みの日に息子とお風呂で歌っていると「あ、それかえるの歌でしょう」と言われた。かえるの歌くらいで得意げにされても、と黙っていたら主人は笑顔でつづけた。
「最近は、君が何の童謡を歌ってるのかわかるようになったよ!前は音程が違いすぎて分からなかったけど。あ、でも替え歌で歌詞を替えられちゃうとまだ全然分からないんだけどね!」
ひとまず、私の歌は上達してはいるようである。程度はどうあれ。後天的にも歌はきちんと上達するらしい。音痴、結構じゃないか。いくらでも後から挽回がきくだろう。めでたしめでたし。
今は、息子が保育園でならう童謡が、自分の知っている歌であると気が付かないことを心配している。