ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】働かなくていいんだよ②

「働かなくてもいいんだよ」

 

単身赴任を命じられた私に、主人はそういったのだった。そんな苦難の待ち受ける道に、なぜ飛び込む必要がある。会社を辞めて、一緒に暮らせる道を一緒に歩もう。

私は全く想定していない話だった。

 

会社を辞める。この街で、この人と暮らしていく。ごはんを作って、掃除をして、洗濯をして、彼の帰りを待つ。そうやってのんびり暮らしていけばいい。24時間追い立てられるように仕事をするのではなく、大切な人のために時間を使えばいい。一緒に住んでいたら、そのうち子供だって授かるかもしれない。家にいるのに飽きたら、近所のいい匂いのする喫茶店にアルバイトにいってもいい。

見たいと思っていた映画だって、数年分たまっている。週末は二人で寝坊をして、さんぽをして、美味しい珈琲豆を買って帰るのだ。そうだ、珈琲豆の卸売業に転職できないかしら。薄給だときいたことがあるけれど、構うものか。そこで修行をして、いつかカフェをひらくのだ。

やりたいことはたくさんある。それが、今からならリスクを考えずに挑戦できるということではないか。何を迷うことがある。

 

「少し、考えてみるね」

そう答えた私に、彼はほっとしたように、嬉しそうに頷いた。