孫育て、という言葉をはじめて知ったのは、産前に育児書を読み漁っていたころのことである。
これからかわいい孫を迎えるおじいちゃんおばあちゃん向けに、孫とのかかわり方を説いた本である。この本の面白いのは、肝となる部分が「孫の母親(実の娘or息子の嫁)との関係性こそなにより重要である」と説いているところで、しかも「うんうん、よくぞ言ってくれた」と思うことばかりなのだった。
しかし母は本を読む人ではないし、主人の母に読んでほしいなどと口が裂けても言えるはずもなく。そもそも自らこんな本を読もうと思う人は、きっと最初から配慮の行き届いた人なのではなかろうか。本当に必要な人の手には届いていないような気がして、ちょっと残念である。
私の母はちゃらんぽらんな人だが、妊娠した時には大層喜んでくれた。
やれランドセルは私が買ってやるだの、やれファーストシューズはどうするだの、まだ安定期に入ってもいないのに鬼が笑うようなことを毎日のように言っていた。(実際に、生まれる前に子供用長靴が送られてきた)
母は遠方に住んでいるので、日ましに大きくなっていくお腹を見ることはかなわず、次回のエコー写真はまだかまだかと何度も催促されたものである。
しかし問題はそこからだ。
母は大昔私を生み育てたことをきれいさっぱり忘れてしまったのか、それとも私が本当に心底手のかからない強靭な赤ちゃんだったのか分からないけれど、妊娠中に産後の生活を心配していた私に向かって言い切ったのである。
「赤ちゃんなんかそんなに泣かないし、おっぱいあげておむつ替えるだけで勝手に大きくなるわよ!家事だっていつも通りできるに決まってるのに心配しすぎ!甘えるな!」