ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】産後ケアでの出来事④

「・・・2時間も寝たのに、今日も預けるの?

 休めたって言ってたじゃないの。何がつらいの?

 母親なんだからもう少し、頑張ってみたら?」

 

初めて人に息子を預けて眠った翌日、部屋に現れたスタッフさんにそう冷たく言い放たれた私は、何にも言葉が出なかった。

そうだ、2時間も寝たのに、また息子を預けるなんて、言ってはいけなかったのだ。そうしたいと思ってもいけなかったのだ。母親なんだからもう少し頑張らなくては。頑張らなくては、もう少し。だって母親なんだから。母親なんだから。

 

その日は朝から夕方まで、恥ずかしいような情けないような気持ちで過ごした。別のスタッフさんがきても、最低限のことしか話さず、出される食事にもほとんど手を付けなかった。ひたすら息子に授乳をし、どのくらい授乳ができたかベビースケールで測り、体重を記録し、まんじりともせず息子をみていた。

夕方になって、私に「もう少し頑張れ」といったスタッフさんが「それで、何時から預かればいいの?」と冷たく聞いてきた。

朝私がなにも答えなかったので、そのまま夜間は預かるつもりで尋ねに来たらしい。

 

とんでもない、と思った。お前は母親失格だとでも思っているかもしれない人に、大切な息子を預けることなんて絶対できない。こんな人に預けるくらいなら、何日眠れなくても自分でみる。

「結構です。息子は預けませんので、大丈夫です」

固い声で答えた私に、様子がおかしいとやっと悟ったのか、そのスタッフさんは慌てたように言い募った。

「え?あら、いいのよ預けて。私が言ったことがなにか気に食わなかったかしら?別にそんなつもりで言ったわけじゃないからいいのよ」

 

何がそんなつもりじゃないというのか。今思えばそのスタッフさんも別に悪人というわけでなし(そんな施設で働いているくらいなのだから)、ちょっと顔色のよくなった私を叱咤激励するつもりだったのかもしれない。私もあらそうですか、と気にしなければよかったのかもしれないけれど、当時の私にはかなり堪えたのだった。

 

その人が部屋からばつが悪そうに出て行ったあと、我慢していた涙がたらたら流れてきた。拭うことすらしなかった。

なんだ、助けてくれるって言ったんじゃないのか。

少しでもきつい人は、産後ケアに来てもいいって、行政が言ったんじゃないのか。

「もう少し頑張れ」ってなんだ。

もうこれ以上、なにを頑張れっていうんだ。

もう頑張ってるよ。頑張ってるじゃないか。まだ足りないのか。

母親は2時間眠ってはいけないとでもいうのか。

だったら助けてくれるなんて言わなければいいじゃないか。

こんなに弱っているのに、なんでまだ攻撃してくるんだ。

私はここに、助けてほしくて来たのに。甘えさせてもらいに来たのに。

 

その日は一睡もできなかった。