ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】それは女性の仕事だよ①

「それは女性の仕事だよ」という言葉で、いい気分になったことは一度もない。

残念ながら、何度も何度も言われたことのある言葉である。時には憤慨しながら「そんなのは女性の仕事だろ、なんで俺に言うんだよ」という文脈で。ときにはにこやかに「やっぱり女性にやってもらう方が丁寧でいいよねえ」と文脈で。

 

私が新入社員のころ、水屋(という表現で伝わりますか?給湯器や電子レンジのおいてある会社のちょっとした台所です)の掃除をしていたのは、そこに務める一般職の女性たちだった。水屋以外の場所は専門業者が掃除をしてくれていたのだが、なぜか水屋だけは当時契約外で、長年「女性が掃除するもの」と思われていたらしい。

 

気配りの行き届いた女性の先輩方が、ベテランも新入社員も隔てなく、毎日交代で掃除をしていたおかげで、水屋はいつも清潔であった。

 

さて私は当時、その職場で初の女性総合職として採用された(今では総合職と一般職という言葉を使う会社も少なくなってきたかもしれない)。

仕事内容は総合職の男性陣ともちろん同じ。しかし性別は女性、ということで、一般職女性たちは迷ったそうだ。「水屋掃除の当番に、あの子は組み込むべきかしら?」

その女性たちは「総合職であっても女なんだから掃除をしろ!」と強固に主張をすることは全くなかった。それまでの枠組みから外れた新人の取り扱いに、ただただ困惑していただけだ。私は一も二もなく「私もやります」と手を挙げた。女性だからというよりも、自分も使うその場所を、自分よりも随分年上の方達に掃除させるのが、心苦しいと思ったからだ。私も汚すのだから、私も掃除をする。そのくらいのシンプルな気持ちだった。

 

残業確定のある日、コンビニで買った軽食をレンジで温めて食べようと水屋に向かうと、ちょうど同期入社の一般職の女の子が、水屋を掃除しているところだった。口数は多くないがとても目配り気配りのきく子で、掃除もいつも完璧(蛇口まで磨いていた)であった。その日は、残業となった社員のサポートのために残っていたらしい。

その子がシンクを洗い水滴を拭き上げたところで、同じく残業確定しているのであろう先輩の男性社員がやってきて「おつかれ~」とにこやかに言いながら、食べ終わったカップラーメンの汁をバシャっ!とシンクに流した。

勢いよくカップをひっくり返したせいで、ラーメンの汁はシンクの大部分にかかり、その上シンクの外までこぼれて、隣に伏せてあったお客様湯飲みまで汚した。

あららご愁傷様です先輩・・と思った次の瞬間、その先輩は一言ことばを残してさっさと立ち去ってしまった。

 

悪びれず「あ、掃除しといて~」と言いのこして。