ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】それは女性の仕事だよ 完

全く納得がいかない。

しかしまだ職場で虫けら同然の扱いを受けていた私には、直談判などできそうもない。

 

悩んだ末、それでも納得いかなかったので、丁寧に事の顛末を上司に説明することにした。

「不当だ!」と憤るのではなく、同様の行いがされた際に職場が被るかもしれない不利益について、新人ながら憂慮しているという体で(はい、そうです。直接文句を言う意気地がなかったのです。今なら言えますよ、年齢万歳)。

その水屋はつくりが少しオープンになっていて(出入りの邪魔だからと、誰かが戸を外したらしい)、入口側を通ると、レンジや冷蔵庫は見えないものの流し場は丸見えになっていた。しかも応接間へ続く廊下に面しているので、客先の営業が頻繁に出入りする。

昨日は偶然女性が居合わせたので掃除ができたが、同じことをやって誰も気が付かなければ、翌朝廊下までラーメンの濃厚な香りでいっぱいであっただろう、と。もしこのような些細なことで客先の評判が落ち、あまつさえ部長の顔に泥を塗るようなことになりはしないだろうか、と。

 

当時の部長は整理整頓に厳しく「仕事のできる人は机がきれいだ!いい会社は職場がきれいだ!」と断言する程だった。部長の参謀である上司は、私の密告に顔を青くしてすぐさま先輩を呼び出して叱りつけたらしい。自分で汚したなら自分で掃除しなさい!と。当たり前のことである。なんなら保育園で教わるのではなかろうか。

しかしその先輩は「女性が手が回らないなら他の人を雇え」と問題をすり替えたらしく、そこからあれよあれよと話は転がって、職場の水屋は専門業者によって毎朝掃除がなされることになった。

男女問わず汚した場所は責任もって自分できれいにしましょうと提言したら、では専門の業者に頼もうという話になるなんて、おかしな話だ。私はまたしても釈然としなかった。

しかしそのおかげで水屋の掃除はなくなり、これまで掃除をしていた女性たちは喜んでいたので、私も言葉は飲み込んだ。そして部長からの叱責を恐れた上司が、水屋の番人となり厳しく巡回を始めたので、同様の事象は繰り返されず、まあめでたしめでたしではある。

 

思うのだけれど、もはや品位の問題なのだ。ラーメンの汁に限ったことでなく。女性だの男性だのに限ったことでなく。自分の後始末は自分でしましょうとか、相手の立場にたって物事を考えましょう、とか。そしてこれは家庭内でも同じことがいえると、私は思っている。

役割の違う大人同士、互いに助け合いながら、相手に寄り添いながら、組織が円滑にまわるよう役割を全うしていきましょうと。業務分担外の事には当然手は出ないだろうし、出来ないことも、思い至らないこともあると思う(私も毎日主人に助けてもらってばかりだ、部屋に入り込んだ虫の始末だとか。部屋のコード類を芸術的なまでにきれいにまとめて整理してもらうだとか。でもお礼はきちんと伝えるし、彼もそうする)けれど。

もしも自分の後始末を他の人につけてもらったり、助けてもらったりしたときは、その後にどんな対応をとるかで、品位がみられるのではなかろうか。

 

例えば、ありがとうとか、ごめんねとか、次はどうするとか。

感謝と反省、次回への対策だ。

だって、自立した一人の大人なんだから。