ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】しわしわのクリームパン

ぎゅっと握った息子の両手は、まさしくクリームパンのようだ。むちむちで、やわらかくて、しっとりとしていて、あたたかい。生まれたときから肉厚で手の大きなこどもだったが、それでもまだまだ小さくてかぶりつけば口の中に丸ごと入ってしまいそうな大きさだ。

焼きたてのパンは人を幸福にするけれど、息子の両手もまた、両親である私と主人を幸福でいっぱいにしてくれる。オーブンを開けるとふわっとかおるバニラビーンズの代わりに、こども特有の牛乳っぽい匂い(生まれた時から変わらないあれは何の匂いなんだろう)がする。こぶしを握ったまま顔をこするので、表面によだれだか鼻水だか分からない液体がついていることもあるけれど、ちっとも気にならない。食べてしまいたいほど可愛いとはこういう感情なのだと、息子が生まれて初めて知った。愛しさに駆られてすんすん匂いを嗅いでいると、すげなく振り払われるのだけど。

 

肌が乾燥しやすい息子には、保湿剤や市販のクリームが欠かせない。顔も手もケアを怠ると乾燥して、どういうわけかそこからブツブツができたり赤くなったりするので、日に何度もクリームを塗っている。皮膚科の先生には生後3か月からお世話になっていて、息子も顔なじみだ。

朝や休日はケアしてあげられるが、当然のことながら、保育園ではそんなものを塗ったまま維持することはできない。広まる感染症影響もあって、先生たちはとても注意深く何度も手洗いをしてくださる(隙あらば水遊びに興じようとするからきっと先生には大変な思いをさせている。心から感謝・・!)ので、必然手は水分を失って、すっかり乾燥してしまう。

夕方、お迎えにいくとぎゃーっと泣きながら私にすがりついてきて、もう逃がすものかとひっしと服をつかまれるのだけど、つかんだその手は乾燥してしわしわになっている。冷たくなった両手は冷えてしぼんだクリームパンのようで、こぶしごと両手で握りこんでしまいたくなる。頑張ったのだ。息子は今日も一日頑張って待っていてくれたのだと思うと、胸がぎゅっとする。

家に帰って一緒に手を洗い、保湿剤を塗ってからあたたかい室内でしばらく遊んでいると、いつの間にやらすっかり焼きたてのクリームパンにもどっている(いつも不思議でたまりません)。ふっくらとした幸福の象徴に。

 

このクリームパン、可愛いだけではなく、実は優れた用途もある。

毎朝保育園の個人用おむつゴミ箱に袋をかけるとき、むちむちでもふっくらでもない私の乾燥した手のかわりに、いともたやすくビニールを開いてくれるのだ。息子も慣れたもので「クリームパンさん出番ですよ」というと気前よく片手を貸してくれる。