ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】通行手形を出しなさい

息子は離乳食開始期からずっと食の細いこどもで、一歳半となった今もそれが継続している。保育園に行き始めて周囲の子たちが食べるのを目にするようになったためか、以前よりは随分たくさん食べてくれるようになったが、やはり摂取カロリーより運動量の方が多いようで、かなり細身である。

 

そんな息子の最近の食事風景は、彼の食へのこだわりが垣間見えるものとなっている。

最近の息子の夕飯は、ごはん・主菜・副菜の3品だ(一汁三菜なんかじゃ全然ないです。これが私の精一杯)。ごはんを盛ったプレートを目の前におくと、まずきょろきょろと顔を動かして品定めをする。彼は大真面目なのだろうが、そのきょろきょろと顔を左右に動かす様がわざとらしく見えて、いつも笑ってしまう。

そしてその日の「好物」を一品定めると、それだけを食べさせるよう要求する。小さな右手の人差し指だけ器用に立てて「ううっ!」と言って「好物」を指さす。そしてその「好物」以外を食べさせようとすると、グイっと給仕の手を押し返して抵抗する。「いや、欲しいのこれじゃないから!!」

それは主菜のブリ煮であることもあれば、副菜に入れたコーンであることもある。ごはんであることもある。

しかしいくら可愛い息子の指示といえども、一品だけを食べられるのは栄養面が心配なのだ。素直に聞くことはちょっと出来ない。そこで私は素知らぬ顔で、スプーンの上に「好物」と他の食材をのせて差し出す。

例えば、今日の「好物」はコーンだった。ごはんをスプーンに盛って、コーンを二粒、ちょんと乗っけて「ほらほらコーンだよお~」という風に。嘘はついてない。単品ではないというだけで、コーンもちゃんと乗っている。

 

彼の良いところは融通が利くところだ。

差し出したスプーンを右手でがっと掴んで、まじまじと眺め、コーンが乗っていることを確認する。「ううっ!」といって左手でコーンを指さす。

「コーン、よーし!スプーン通ってよーし!」そうしてようやく口を開けてくれる。

こだわりの強い息子の口を通行するには「好物」が必要なのだ。コーンはいわば息子の口を通り胃へ到達するための通行手形である。

食事をはじめて10口目くらいまではこのやり取りが繰り返される。私はせっせと手形を用意して、なるべくまんべんなく栄養をとってもらえるようにバランスよくスプーンの上に食材を盛り付ける。手形はよく見えるように一番上に乗っけて。

息子の興がのってくると、手形なしでも通行許可が下りる場合もあるが、それでも「ううっ!」と「好物」を指さしたときは直ちに指示に従わねばならない。手形は何より、信用が第一。自分の求めるときにはかならず「好物」を用意してくれるという信頼関係によってこそ、ほかの食材の通行も成り立っているわけだから。

私は、この積み重ねにより、全面的に通行が可能となる日もきっと遠くないはずと信じて今日も、その日を待ち詫びている。