ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【今週のお題】それはいずこのスイッチか

パチッと聞きなれた音がして、反射的に「ぽぽぽぽぽーん!」という陽気な言葉が私の口から飛び出した。それを聞いた息子は「うんうん」と頷いて満足そうだ。間髪いれずにまたパチッ!次はソファに座っていた主人が「ピーピー!ガチャン!」と不穏な音を立てた。いつも思うのだけど、彼は無機質な音を口で再現するのがとても上手い。

息子が操作しているのは、100円ショップで購入したスイッチだ。大きさは5cm四方で、厚みは1cmほど。おもちゃとして販売しているものではなく、電池を入れるとスイッチ部分そのものが光り、照明として使用できるものだ。我が家では電池を入れずに、ただパチパチ音がなるドンガラのまま使用している。息子の手の届く場所(床から50cmくらいの壁)に外れないよう固定してあり、事情を知らなければとても不自然な場所にスイッチがあるようにみえる。

 

息子はどこでもかしこでも、スイッチとあらば「デッチ!デッチ!(電気といいたい)」と言って押したがるので、そんなに好きなら気のすむまでスイッチを押させてやろうではないか、と設置したものだ。設置した当初は大興奮でパチパチやっていたが、しばらくすると飽きたようで、別の楽しみ方を模索し始めた。

 

ある日リビングの床掃除をしていたら、スイッチをパチパチやる息子と目が合った。すると息子は無言でジッと私をみつめた後「チィッ!(パチッといいたい)」と言ってスイッチを鳴らした。

その瞬間、親子の間を目に見えぬなにかが電撃のようにはしった。電池は入っていないはずなのに、まさしく電流が走ったかのようであった。私を突き動かしたのは、なんとしてもこの信頼に応えねば!という使命感。

「月に代わってーっ!」

考える前に口から出たのは、昔流行った美少女戦隊アニメの決め台詞である。人間、咄嗟のときに年齢が出るものだ。息子が好きなアニメは別にあるのに。ちなみに決めポーズは両手を大きく開いて片足だけ中途半端に上げるという、全くもって無様な様子である。

しかし息子は大変気に入ったようで「えっへえ!えっへえ!」と手を叩いて大喜びだった。その後何度もパチパチとスイッチを動かされ、私はその音に合わせて何度も決めポーズをとる羽目になった。

わかります、それはいわゆるかあちゃんスイッチというやつですね。

息子が飽きるまで続いたその遊びのせいで私は疲労困憊であったが、彼がとても満足そうだったのでよしとしよう。

 

この遊びはすっかり息子のお気に入りになり、主人をも巻き込んで我が家の定番となってしまった。主人も、説明せずとも初見でそのルールを理解したらしい。息子と目が合った方が、パチッという音に合わせて奇声(電子音っぽいものが好ましい)をあげるか、コミカルなポーズ(体全体を使ったものが好ましい)をとるしきたりである。

数千円するおもちゃよりもずっと気に入りのおもちゃとなったようで何よりだ。お手軽価格で長ーく遊べる。さらには親子の絆も深まって、まさしく買ってよかった2020である。

 

お題「#買って良かった2020