ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】育児"休暇"が羨ましいですか? ①

「ええよなぁ、女の人は育児休暇で1年も休めて。ほんま羨ましいわぁ!」

明日から産休。もうしばらく出社せず顔も合わせられなくなるからと、上司が職場のメンバーを会議室に集めて激励してくれたときのことだった。戻ってきたらまた一緒に働きましょう、と口々に声をかけてもらえたことが有難く、頭を下げたタイミングで、悪気なく発せられた一言だった。広い部屋だったのだが、声の大きな人だったので私の耳にもしっかりと届いてしまった。

その言葉を発した男性スタッフも全く悪気はなく、素直に「一年休むのが羨ましい」という思いが口からこぼれただけだったのだろう。仕事でもよく膝を突き合わせた仲であった。だから他意はないと分かってはいたが、その時の私は聞き流すことができなかった。

「羨ましいですか?」

私の口からも、するっとこぼれてしまった。笑顔は崩していなかったので、軽い返事に聞こえたとは思う。しかし、わざわざ忙しい中でみんなを集めてくれた場を白けさせてはならないと我に返り、男性でもとれますよ~と言ってその場を終わらせた。事実であるのに「いやいやいや~」という笑いの空気で締めくくられた。

 

出勤最終日、私の心はからっぽだった。

これから出会える可愛い我が子のことや、出産準備のこと。考えるべき幸福な事柄は山ほどあったのに。心にぽっかりと穴が開いているようだった。いわゆる仕事中毒の状態だったのかもしれない。朝から晩まで、ときには朝から朝まで仕事をしていたので「仕事をしていない自分」が全く想像できなかった。明日からいったい何をすればよいのだろう、と茫然としていた。(当時の自分に会えるなら、出産準備何一つ終わっていないだろう馬鹿者!あとで滅茶苦茶に苦労するんだぞ!とハリセンで叩いてやりたいです)

 

「育児"休暇"」「羨ましい」という言葉が胸に引っ掛かって苦しかった。

私はこれから産休をとって、こどもを産む。その後も育休を取得し、当面は育児に専念してキャリアは中断。産休のみで復帰することだって物理的には可能だ。けれど、単身赴任であったこと、それが復帰後どうなるか分からないこと、初めての育児で勝手がわからないこと、手助けしてもらえる大人がいないこと。懸案事項が多すぎたので、申請段階では標準期間で取得しようと決めていた。

本当なら、その年に管理職登用試験を受けられるはずだった。仕事仲間に恵まれたおかげで仕事の成果が高く評価され、十分資格を満たしていると太鼓判をもらっていた。しかし、ストレートでの昇格を逃した今、次のチャンスがいつ巡ってくるのかは、もう分からない。