ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】マラカス振って落ち着けよ

息子の前では夫婦喧嘩などしないほうがよいと分かっていたのに、先日ちょっとしたことがきっかけで、主人と口喧嘩をしてしまった。というより私が一方的に怒っていたのである。私が育休から復職した後の働き方に関することであったので、さらっと受け流せずについその場でムキになって食って掛かってしまった。フルタイムで復帰することが決まっていたので、基本的には同じ立ち位置のはずなのに、私にだけ負担を強いることを当然とするような言い方に、ムッとしてしまったのだ。息子はお気に入りのくるまのおもちゃで遊んでいた。

「つまり、自分は残業していいのに私にはダメと言いたいわけね。それは一体どういう理屈かしら」と刺々しい口調で主人に話しかけたところで、スイっと横からなにかが差し出された。

いつの間にか私のそばに来た息子が、無言で私に何かを差し出している。みると、差し出されたのは、薄い水色のプラスチックで出来ているマラカスであった。しまじろうさんのDVDを見ながらダンスを踊るのがすきな息子に、先日買い与えたものだ。買った直後に矯めつ眇めつしたあとに、気に入らなかったのか、ポイっと放っておかれたもの。たしかおもちゃ箱の底にしまっておいたはずのものである。

「まあまあこれでも振って落ち着けよ」とでも言いたげに、無言でマラカスを差し出された私には、受け取ってシャカシャカするしか道はない。音楽もなしにシャカシャカやっているうちに、息子は「うんうん」と頷いてまたくるまのおもちゃで遊び始めた。

 

それはまさしく仲裁だった。なんということだろう。

そのあまりにも堂々とした振る舞いに、ふはっと笑ってしまってからはもう怒りを持続などできず、夫婦ふたりでお腹を抱えて笑った。

その後、夫婦そろって息子に謝り、ぎゅうっと抱きしめた。雰囲気が悪くなって怖かったのだろうか。そしてこのマラカスというチョイス。息子なりに考えて、その場に即したアイテムを投入してくれたのだろう。確かに、マラカスを振りながら怒れる人もそういまい。機転のきくところは主人譲りだ、なんて逞しいのだろうかと親ばかを発揮していたら、主人から「それは違う」と物申された。

主人の見解では「うーん、このマラカスならそんなに気に入ってないし、まあ貸してやらんでもない!」という気持ちから選ばれたに違いないという。たしかに、そのマラカスに興味をもったところなど見たこともないのに、おもちゃ箱の底からひっくり返してきたのは不思議に思った。主人は自信満々だ。息子と同じ顔(息子が主人と同じ顔?)で言われるものだから、信憑性がぐっと増す。

 

「夫婦喧嘩など犬も食わない。マラカスでも振って落ち着けよ」と言われたような気がして、未熟な親である我々は、齢1歳にして仲裁をさせてしまったことを反省するとともに、堂々たる仲裁をやってのけた息子の将来を、夫婦ふたり仲良く見守っていこうではないかと頷きあった。