ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】きみと見上げた夜空なら

息子を保育園にお迎えにいけるのは、もっぱら暗くなり、空にお星さまが光る頃である。仕事を終えると保育園にまっしぐら。気温も下がり厳しい寒さの中、屋外にある手洗い場でじゃぶじゃぶと手を洗い、かじかむ手をこすりながら息子の待つ保育室に駆け込む。

この手洗いで私の手は芯まで冷えてしまうので、息子を抱き上げるといつも「ちったぁ~!(冷たいと言いたい)」と迷惑そうな顔をされる。わたしは負けじと、ぎゅうぎゅう息子を抱きしめる。ただいま、今日も待っててくれてありがとう、と言いながら。

 

息子を引き取って、抱っこしたまま暗い夜道を帰っているとき、息子はよく夜空を見上げている。保育園に通い始めるまでは、日が沈んだら滅多に外に出なかった。「夜」というものが、まだ彼には物珍しいのかもしれない。暗く、湿った、寂しいはずの時間帯。息子にとっては、見慣れたものも姿をかえて目新しく映るのだろう。

 

今日は「ちゅっき!ちゅっき!」と言いながら、三日月を指さしていた。帰りみちで、毎日のように「お月様、きれいだね」と言っていたからだろう。

私はこれまで、月だの星だのをみて「わあきれい」などとあまり思ったことがなかった。テレビのドキュメンタリーなどで満点の星空が特集されたり、流星群の映像が流れたりすれば「おー」「ふーん」くらいには思っただろうけれど、普段の生活圏内で、ふと見上げた夜空に浮かぶ月を、きれいだとは感じなかった(もちろん汚いとも思っていないけれども)。私の残念な感性ゆえだろう。夜空を見上げることさえ、なかったと思う。

 

けれど、いま息子が夜空を見上げて「ちゅっき!ちゅっき!」と繰り返し指さす先に光るお月様は、本心から「きれいだね」と言ってあげられる。「愛している」を「月がきれいですね」と訳した偉人の気持ちがほんのすこし分かったような気がする。

もし彼がもう少し大きくなって、きらめく星々に興味を持つのであれば、星座を調べてやりたいと思う。一緒に感動したいと思う。それが出来るのは、物心ついてから巣立つまでのわずかな時間なのだろう。

変わらぬ生活圏内の中、私たち両親は、息子の目を通して日々新しいものをみている。教え、導き、与えているつもりでいて、実際には息子から与えられるものの多さに胸がいっぱいになる。