ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】それはさぞかし素敵なもので

「あったぁー!」

息子がリビングの床から何かを拾い上げ、きらきらした笑顔でつまみ上げた。ずいっと差し出す小さな手。小さな人差し指と親指で、器用につままれたその「何か」はかなり小さいのか、こちらからはよく見えない。

得意げに「あった!あった!」と連呼する息子に近寄って、しゃがみこんで目線を合わせ「なにを見つけたのかな?かあちゃんにも見せて♪」と言いかけた私は、その何かの正体をとらえて「ひえあ"ぁ~~!!」と情けない悲鳴をあげた。

 

虫。虫である。紛れもない虫である。

かわいい息子の手につままれているのは、虫の死骸であった。

もちろん芋虫とかカナブンとか、口に出すのも憚られる台所の悪魔などではなく、ほんの小さな(というにはちょっと大きな)羽虫であるが、息子の指につままれ至近距離でみつめたその姿はなかなかにインパクトが強かった。

悲鳴をあげながら息子を抱き上げ、すぐに洗面所で手を洗わせる。息子は何を思ったか「ばばーい!(バイバイと言いたい)」と哀れな虫が流れゆく排水溝に手を振っていた。

 

これまで息子の「あったぁ~!」は、大抵どんぐりとか、きれいな色の葉っぱとか、家の中で行方不明になったおもちゃの部品とか、そういった「ちょっといいもの」を見つけたときに発せられる声であった。しかしこの度どうやら「虫」も彼にとってのいいものカテゴリーにもれなく登録されていることが判明した。

 

この日以来、公園だろうと家の中だろうと、息子が「あったぁ~!」と声をあげると心臓がびくうっ!と飛び跳ねてしまう。

そうだろうそうだろう、さぞかし素敵なものを見つけたのだろう。

ちょっとしたホラーだ。息子の声が嬉しそうな分だけ、息子の指の間に挟まっている「何か」への恐怖度は跳ね上がるのだった。