ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【キャリア】それはご配慮ですか?

「もう少し、家庭を大事にした方がいいんじゃないの。君はおこちゃまもいるし、家事もしないといけないんだからさぁ」

 自分の常識は、世間の非常識なのだろうか。そんなことに目くじらをたててと眉を顰められるだろうか。神経質だと距離をとられるだろうか。聞き流してニコニコしていればよかっただろうか。

言われた瞬間に感じたのは、目の前が真っ赤になるかと思うほどの怒りだった。しかしその感情はすぐに鎮火して、襲ってきたのは無力感だった。仕事を頑張っても結局、かけられることばは激励でも労いの言葉でもなく、嗜めと親切ごかした「ご配慮」の言葉である。

働く母親は、職場では申し訳なさそうに縮こまっていないといけないのだろうか。

 

育休からフルタイムで復帰してはや3か月。ようやくもようやくだが、仕事が軌道に乗ってきただろうか、と思い始めた時期であった。休業前とは全く異なる、新しい仕事。右も左も分からないながら、関係先との顔つなぎが済み、どんな成果を求められているかがわかってきたところであった。息子の発熱も頻度がさがり、主人や地域の力を借りて、突発欠勤をすることのない体制を整備できたことで「普通に」仕事を任せてもらえるようになっていた。

そんな矢先に起こった職場での大規模トラブル。私を含め、所属するチームメンバーは全員日夜問わず、土日休日問わずの対応を求められた。なんとか事態が収束し、一息ついたところでなぜか私だけが名指しで残業を咎められ、冒頭の言葉をかけられるに至る。

上司にアサインされた業務、指示を受けた残業、休日出勤だったにも関わらず。

 

私は育休から復帰するにあたって、会社からは「こどもがいるのはみんな一緒。特別扱いはできない」と言われてきたし、特別扱いを要請したこともない。それなのにご丁寧に「ご配慮」だけは賜るのだ。生まれて間もないこどもがいる男性社員にはないその「ご配慮」は、女性であれば黙って飲み込まなければいけない類のものなのだろうか。その言葉を直接かけてきたのは斜め上の上司だったが、「育児をしながら、仕事も頑張りたい」という私を応援してくれていた上司まで、その言葉に感化されて「ちょっと抑えなさい」と言い出す始末だ。

育児も家事も、性別問わず家庭に所属するすべての大人に責任が発生することだ。もちろん仕事も同じである。

周囲のサポートも受けながら「育児がしたい、けれど仕事もしたい頑張りたい、出来ることならキャリアを積み重ねていきたい」と思い、それに向かって家庭をやり繰りしながら努力することは、はたから見ると見苦しいのだろうか。

 

大きなトラブル対応を終えて、達成感に肩を叩きあう同僚を横目に、いま私は途方に暮れている。ぱしっと心の折れる音が、聞こえた気がした。