【アメリカ生活】TODOリストのない生活
埋めるべきチェックボックスのない日というのは、なんて自由で、なんて心許ないのであろう。マルチタスクというものがどうも苦手で、なにをするにもTODOリストが不可欠だった。
新入社員時代には
「□〇〇さんへのメール返信9:00まで」といった業務に関することから
「□昨日の飲み会で隣に座った他部署の先輩にお礼を言いに行く」など、
自然にできてもよさそうなものまで、全てTODOリストにしていた。名前のとおりの「ぶきっちょ」なので、ひとつのことを始めると他の大事なことをきれいさっぱり忘れてしまうのだった。
息子が生まれてからはTODOリストにすべて☑が入ったことは一度もない。
「□保育園布団にお名前シートを縫い付ける!」
「□予防接種の予約 〇〇医院は昼休業、業務時間中に電話予約必須!」
「□企画書提出17:00最遅!」
「□パプリカが腐りそう!今日使う!」
どれもこれもやろうとして、どれもこれもTODOリストにエントリーするのだが、「必須!」と書かれたものが1週間後まで残っていたり、やられないまま放置されたりすることもままある。育児休業中も、のんびりしているようで、いつも「あれやらなきゃこれやらなきゃ」と何かに追い立てられていた気がする。
けれど今。わたしは立派な無職。いつ日本に帰るかも分からない。
渡米後、荷物の整理も済み、面倒な事務手続きが概ね済んだところではたと気づくと、もう何日もTODOリストを更新していないのだった。「いってらっしゃい」と主人を見送った後は息子とふたり、なにをしてもなにをしなくてもよい生活。
さて困った。習い性というか、埋めるべきチェックボックスがないとそわそわして、落ち着かないのである。もちろん息子の世話は終日あるのだけれども、彼が集中して遊んでいるときや寝静まった後などに、ふと「私はいまここで何をしているのだろう」と不安になる。
そこで導入したのが、バケットリスト(bucket List 首をつって死ぬときに、台(バケツ)を蹴ることに由来するらしい)。TODOリストがやるべきことリストならば、バケットリストはやりたいことリストだ。
またしても、さて困った。思うさま「やりたいこと」を連ねるのが案外難しい。実現可否は置いておいて、まずは「やりたいこと」が何か考えているのだが、真っ先に「出来るかな?」がきてしまいなかなか思いつかない。
結局わたしの頭のなかのTODOリストに、
「□バケットリストを作成する」がエントリーしているだけなのであった。