ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【今週のお題】日本のおうちに帰りたい

今思い出しても胸がぎゅっとなることがある。

 

日本から、アメリカの田舎町に越してきて数か月。夏は暑く、冬は極寒となるこの街での暮らしもようやく馴染んできた。

長い長い冬がようやく終わろうとしている4月。アパートのベランダから見える大きな木にはきみどり色の若葉がちらほら見えてきた。住んでいるアパートよりも背丈が高く、葉っぱもたっぷりと茂らせてくれる気前のよい木だ。

何の木だかも分からないけれど息子は「アメリカの木」といって気に入っている。

アメリカの木、なんか葉っぱが生えてる感じするねえー」

アメリカの木、なんかリスさんがいそうな感じするねえー」と、窓からのぞく雄姿を見つめては報告してくれるのだった(おかげでリビングの窓には、いつも同じ高さに息子の鼻をこすりつけた跡がある)。

 

来米したときにちょうど2歳だった息子。当初の2週間ほどは、時差ボケも緊張もあり努めて気丈にふるまっていたのだと思う。だがある日の夕方、部屋の隅で丸くなってポツリと言った。

「ぼく、日本のおうちに帰りたい・・」

 

冷や水をかけられたようだった。たかだか2歳、まだ何も分かっていないであろうと侮っていた。大人の都合で、見知らぬ土地になんの了解もなく連れてこられてしまったというのに。

持ってくることのできなかったお気に入りのおもちゃ、何度も読んでいた絵本、手を叩いて笑いながら見ていたテレビ番組、慣れ親しんだ保育園の先生とお友達、いつも優しく声をかけてくれたスーパーのおばちゃん、美味しいコロッケを売っているお肉屋さん。

彼のお気に入りがいきなり全てなくなってしまって、平気な訳がなかったのに。

 

そこからは毎日、お気に入りを見つける日々だった。

スーパーで一目見て気に入った蛍光カラーの派手なミニカー、図書館でみつけたエリックカールの絵本、アメリカで人気の子供向けYoutube、日当たりのよい園庭と優しい先生のいるプリスクール、息子と同じく車好きなお友達、偶然会うとニコニコと声をかけてくれる司書さんやアパートの管理人さん。

そしてベランダからいつでも見える大きな木と、飛び回る鳥や走り回るリスたち。

 

たくさんの新しいお気に入りを見つけた息子は、今日も勇ましくプリスクールへ通っている。そして迎えの車に乗り込んで言うのだ。

アメリカのおうちにかえろうね!」と、満足そうに。

 

 

今週のお題「好きな街」