ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】「ちがうちがう」のその先に

「ちぁう!ちぁう!」

次々と私が差し出すおもちゃに「違う!遊びたいのはこれじゃないんだ!」と訴えかけてくる。「違う」という否定の言葉を覚えた息子が、イヤイヤ期にさしかかるのももうすぐであろうか。

息子はぶんぶんと首を振りながら、顔をしかめている。両手のこぶしはぎゅっと握りしめて胸の前で構え、膝は落とした姿勢なので、さながらボクシング選手のようにみえる。「ちぁう!ちぁう!(違うと言いたい)」と首を振るたび、あまりに勢いがいいものだから、体ごと揺すってパンチを繰り出しているように見える。猫パンチならぬ息子パンチ。1歳男児の繰り出すパンチは力強くも愛しい。

 

あまりに迫力ある様子で「違う!」と主張してくるので、かわいくてついつい、わざと息子が欲しがらなさそうなおもちゃを手渡してしまう。保育園から帰宅して、夕飯までのわずかな時間。たぶん、保育園にいくまえに遊び始め、「もう行くよ~」と中断させられた列車のおもちゃで遊びたいのだろうと思うが、ぬいぐるみや絵本を手渡して様子をみているひどい母である。

すこし前まで、手渡されるものを手渡されるままに受け取っていたのに。大きくなったなあとしみじみしてしまう。

 

そんな私に業を煮やした息子は、母の前を通り過ぎ自ら列車のおもちゃを取りに行ってしまった。小さな背中にはうっすらと「自立」の文字が透けてみえる。

来るイヤイヤ期に向けて「こんなときどうする?」のハウツー育児本を、本屋で見かけるたびに積ん読している。そのくらい、すでに自我の強さを見せつつある息子がイヤイヤ期になったら・・と空恐ろしい気持ちはあるのだが、それを通り過ぎて自立への道を歩み始める息子の姿を想像すると、早くも寂しい気持ちになってしまう。

あっという間に来てしまうであろう、その「いつかの日」を思い浮かべながら、列車のおもちゃを探す息子を追いかけた。「ちぁう!」とそっぽを向かれるであろう、くるまのおもちゃを両手ににぎりしめて。今しか見られないかわいい息子パンチを拝むために。