ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【育児】聞こえてないよ知らないよ?

「歯磨きするよぉ~」と声をかけても、息子は知らんぷりだ。

でも母ちゃんは知っています。あなたがすべて理解したうえで無視しているということを。

 

ある日のお風呂上りのこと。息子の耳穴まわりがうっすら汚れているのを発見した。素人である親が耳かきをするのは危険という話を耳鼻科の先生に聞いて以降、ティッシュや濡れタオルで耳の穴回りを拭うだけにとどめていたが、ちょっと見過ごせないレベルの汚れであった。

「あっ、耳そうじしようかな」とぽそっとつぶやいた瞬間、それまで電車のおもちゃで遊んでいた息子が、シュバっ!とこちらを振り向いた。かと思うと走り寄ってきて、あっという間に膝枕の体制になってしまった。

「さあ掃除したまえよ」とでも言わんばかりに差し出された耳を、麺棒で軽くぬぐう。片方終わったとみるや、快く差し出されるもう片方の耳。しかも掃除している間、あんなにも普段走り回っている息子が、気持ちよさそうに目を閉じて微動だにしないのだ。縁側で丸くなる猫のごとき満足気な表情で。掃除はすぐに終わってしまった。

「もう終わったよ」と声をかけると、しばらく膝上で頭をゴロゴロさせていたが、名残惜しそうに立ち上がった。「あーいー!(ありがとうと言いたい)」とお辞儀までつけて。果たしてこれは偶然か。「ど、どういたしまして・・?」

 

数日後、ふと思い立って息子に「おひざごろーんできる?お耳そうじするよ」とまた声をかけてみた。

すると、ニコニコと駆け寄ってきて、ごろりと膝枕の体制になるではないか。

そうかいそうかい、君は私の言っていることがすっかり分かっているわけだな。なるほどなるほど。つまりアレだ。「歯磨きするよぉ~」といっても見向きもしないのは、分かっていないのではなく、無視しているのだな。よぉーく分かったよ。

 

まだまだ発語も少ないし、こちらの言っていることもあまり分かっていないだろうと思っていた。しかし、息子の方が一枚上手だったのだ。

 

それならこちらにも考えがあると導入したのが、歯磨き後にも与えられると評判の虫歯予防タブレットだ(ひと月分で600円くらいだった)。甘いキャンディ類を食べる習慣のない息子が、初めて食すであろう食感の食べ物。

嫌がる息子を歯磨きした後、息子の目を見ながら宣言した。

「〇〇くんのすきなブドウの味がするタブレットというおやつです。歯磨きをすると、タブレットがもらえます!」

手渡してやると大層気に入ったようで「うっまぁーー!」と手を叩いて喜んだ。

その日以来、お風呂上りには「歯磨きからのタブレット」がすっかり習慣になった。早くタブレットをよこせと言わんばかりに、膝枕をして快く口を開けてくれる。(ついでに自分でも歯ぶらしをくわえて磨くようになった)

 

インセンティブがあれば嫌なことでも頑張れる。大人と同じだ。分かっていてやっているのだ。同じような場面はこれからいくらでもあるだろうから、モノに頼らないインセンティブの設定の仕方を、考えておかねばならない。

なんせ息子の方が一枚上手だ。ぼやぼやしてると先手を打たれるに違いない。