ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【今週のお題】読書、辞書、読書

自宅の近くに市の図書館があって、週に一回、こども向けの読み聞かせタイム(こちらではLeading Timeと言うらしい)がある。日本にいたころにも数回参加したことがあったが、アメリカに来てからはたっぷりと暇な時間があるので、毎週参加している。はじめは「英語の良く分からないアジア人」といった感じで距離をとられていたのだが、毎週通い詰めたおかげで(そしてオーバーリアクションで読み聞かせを楽しんだおかげで)「英語は良く分からないが、まあノリは悪くない日本人」といった感じで、いまはすっかり司書さんとも仲良しである。

 

しかし、このLeadingTime。息子もすっかり楽しみにして、毎週の大事なイベントなのだが、ほんわかした雰囲気と裏腹に、私は毎回戦闘モードである。

というのも2歳の我が息子、なまじ日本語がわかるようになってきたものだから、「本を読み聞かせてくれているが内容が英語だから自分には分からない」という状況を的確に理解していて、司書さんが本を読み始めるや、私をみて「さあ通訳しろ」と言わんばかりなのだ。

そこで私は司書さんのすばらしい抑揚の英語にあわせて、同時通訳の日本語で、本の内容を彼の耳元にささやき続けることになる。こども向けの本と侮ることなかれ、空想物語などはこちらの常識を逸した内容となるので、単語がひとつ分からないだけでさっぱり内容がつかめないこともあるのだ。こんな単語は高校時代の「Target3000」の単語集には載ってなかったぞ!などと脳内で恩師に文句を言いながら、顔ではニコニコと笑顔を絶やさずに、右手はスマホの辞書アプリをポチポチ。

読書、ニコニコ、辞書、読書。その繰り返しだ。

通訳がおくれると、息子は笑いどころや驚嘆どころを逃してしまうことになるので、私はもう必死だ。追いつこうと早口になるので、字余り感も半端ない。だが息子は、私のその必死さがどうやら面白いようで、毎度大変にご機嫌でLeadingTimeを楽しんでいる。彼がご機嫌だと我が家は平和だ。

 

ちっとも運動していないのに、冷や汗で汗だくな私。先日の絵本のしめくくりが「Who is tired?(疲れているのはだあーれ?)」だったのだが、思わず「It's me!!(わたし!)」と答えてしまった。

【アメリカ生活】TODOリストのない生活

埋めるべきチェックボックスのない日というのは、なんて自由で、なんて心許ないのであろう。マルチタスクというものがどうも苦手で、なにをするにもTODOリストが不可欠だった。

新入社員時代には

「□〇〇さんへのメール返信9:00まで」といった業務に関することから

「□昨日の飲み会で隣に座った他部署の先輩にお礼を言いに行く」など、

自然にできてもよさそうなものまで、全てTODOリストにしていた。名前のとおりの「ぶきっちょ」なので、ひとつのことを始めると他の大事なことをきれいさっぱり忘れてしまうのだった。

息子が生まれてからはTODOリストにすべて☑が入ったことは一度もない。

「□保育園布団にお名前シートを縫い付ける!」

「□予防接種の予約 〇〇医院は昼休業、業務時間中に電話予約必須!」

「□企画書提出17:00最遅!」

「□パプリカが腐りそう!今日使う!」

どれもこれもやろうとして、どれもこれもTODOリストにエントリーするのだが、「必須!」と書かれたものが1週間後まで残っていたり、やられないまま放置されたりすることもままある。育児休業中も、のんびりしているようで、いつも「あれやらなきゃこれやらなきゃ」と何かに追い立てられていた気がする。

 

けれど今。わたしは立派な無職。いつ日本に帰るかも分からない。

渡米後、荷物の整理も済み、面倒な事務手続きが概ね済んだところではたと気づくと、もう何日もTODOリストを更新していないのだった。「いってらっしゃい」と主人を見送った後は息子とふたり、なにをしてもなにをしなくてもよい生活。

さて困った。習い性というか、埋めるべきチェックボックスがないとそわそわして、落ち着かないのである。もちろん息子の世話は終日あるのだけれども、彼が集中して遊んでいるときや寝静まった後などに、ふと「私はいまここで何をしているのだろう」と不安になる。

 

そこで導入したのが、バケットリスト(bucket List 首をつって死ぬときに、台(バケツ)を蹴ることに由来するらしい)。TODOリストがやるべきことリストならば、バケットリストはやりたいことリストだ。

またしても、さて困った。思うさま「やりたいこと」を連ねるのが案外難しい。実現可否は置いておいて、まずは「やりたいこと」が何か考えているのだが、真っ先に「出来るかな?」がきてしまいなかなか思いつかない。

 

結局わたしの頭のなかのTODOリストに、

「□バケットリストを作成する」がエントリーしているだけなのであった。

 

【アメリカ生活】This is「ゴミシュシュシャア」

家族でアメリカに移住して3か月。

私も主人も生粋の日本人。どうせ自宅は「日本」なのだからと油断していたのだが、バスの運転手さんやらスーパーマーケットの店員さんやらテレビのコメディアンやら、随所に登場する「英語」の存在を敏感に感じ取った息子がある日「Oh,schoolbus!」と黄色いスクールバスを指さした。

ぎょっとしたのは純日本人の母たる私。彼の発音は完全ジャパニーズイングリッシュである私をすっかり置いてけぼりにしていた。そして純日本人である私の脳みそが描き起こした彼の発音は、「スクーゥベァース」。

 

その「スクーゥベァース」を皮切りに、あれよあれよと英語を話し始めた彼の最近のお気に入りは「〇〇・・英語で?」と聞くことだ。

ごはんを食べていたらトマトを指さし「トマト、英語で?」。

寝かしつけていたらマットレスを指さし「布団、英語で?(マットレスというカタカナ語を知らないので全部「布団」になっている)」

そのたびに母は彼の学習意欲を削ぐまいと、こっそり後ろ手でスマホを起動しグーグル翻訳で正しい発音をチェックすることになる。トマトなら「タメイドゥ」、マットレスなら「メァットゥレェス」などと。到底ネイティブの発音には似ても似つかないのだろうが、ジャパニーズイングリッシュで覚えるよりはよかろうと「それっぽさ」を追求した応答をしているが、発音に関して自然体でするするそれっぽい音で覚えていく息子に対して、背伸びに必死なのは親の方である。

 

しかしここでひとつ問題が起きた。

「そうか、それっぽいことが大事なんだな」といち早く感じ取った息子は、よくわからないけど英語で言ってみたいことばに関して、なんのためらいもなく「英語っぽく」話すようになってしまった。

街中で見つけたゴミ収集車は「ゴミシュシュシャア↗」だし、犬は「イヌゥ↘」である。笑わそうとしているのではなく、大真面目にそれっぽく発音してくるので、笑うのも失礼かと思い堪えているが、免疫のない主人は抱腹絶倒である。

腹を抱えて笑う主人を心配した息子が「Oh,Are you OK?トウチャアン?(父ちゃんといいたい)」と畳みかけるように聞くものだから、もう止まらない。

息子に正しい単語を教えながらも、なかなか見られない主人の爆笑が見られて得したと思っている私はちょっぴり「いいぞ、もっとやれ」と思っている。

【アメリカ暮らし】趣旨は変わりましたが

カフェの床に映っている自分の影はひとつだけで、このところ毎日びったりと張り付いていた2歳の息子の影はそばにない。

彼は本日はじめて、同年代のこどもたちが通うスクールに出陣しているのだ。お気に入りのリュックサックを背負って、意気揚々とはいかないけれど気合十分、頼もしい背中であった。私が立ち去ろうかといういざその時には「泣いてもしょうがないね!!僕の母ちゃんすぐ戻ってくるね!!」と大号泣していたけれども。(大号泣する息子には申し訳ないけれど、「しょうがない」という日本語を正しく息子が使えていることの方に感動してしまった)

 

思えば怒涛の数か月だった。

育児休業から復職して数か月、ようやく仕事も保育園も軌道に乗ってきたかというころに、主人の海外転勤が決まった。日本に残って息子と二人三脚で仕事を続けようか、主人について行こうか、毎日毎晩悩んだけれども、私たち家族は3人一緒に暮らすことを選んだ。いまのところ後悔はしていないけれど、仕事を続けていれば・・といつか後悔する日がくるのかもしれない。

そうして、アメリカでののどかな田舎暮らしも3か月目に突入したところで、ずっとストップしていた本ページを再開することにしました。

すでに私は無職の身。「共働き入門」というブログタイトルとは趣旨が変わっておりますが、いつか日本でもう一度バリバリ働くことを夢見て、キャリアの断絶や子育てについて、アメリカの田舎生活体験記を織り交ぜながらつづります。

【絵本紹介】かぜビューン

今まで読み聞かせてきた絵本の中で、感銘を受けた絵本の紹介です。

 

hon.gakken.jp

 

サイズ:17.5×17.5cm

ページ数:38ページ

初版: 2018年2月8日

発行:学研プラス

 

作者名(tuperatuperaさん)とイラストのタッチで、てっきり洋書の日本語訳かと思いました。

ストーリーは風に吹かれた人物や物の様子を描くだけ、というシンプルさながら、ライオンのたてがみがカツラのように飛ばされてしまったり、強面のおじさんが強風で涙目になったりと、大人もじわっと笑わせに来る内容。かわいいメルヘン絵本向けタッチではない上に、瞳も三白眼気味で可愛げたっぷりとはいかないので、好みは分かれるかもしれませんが、私はとても好きです。(1歳後半の息子にはこの面白さはまだ伝わらず・・)

しかけのページが風をイメージした波型裁断なので、ちょっと耐久性に不安がありましたが、紙質がしっかりしていたので数回読んでみてとくに問題なさそうでした。

 

ご参考までに。

 

【絵本紹介】のりものなあにかな

今まで読み聞かせてきた絵本の中で、感銘を受けた絵本の紹介です。

hon.gakken.jp

 

サイズ:20.0×19.5cm

ページ数:18ページ

初版: 2018年10月25日

発行:学研プラス

 

男の子(ゆうくん)がおかあさんといっしょに街をあるくなかで、いろんな乗り物を見かける話。ページの端に、次ページの乗り物の一部がみえているため「つぎはなにかな?」と読み聞かせの中で自然にやり取りが発生する点はおすすめ。

発行は2018年ですが、イラストも描かれている風景もレトロ調で懐かしい雰囲気。現在の子育て世代がこどもだったころより、さらに昔の古き(よき?)日本という感じです。登場人物の男の子の表情も、やわらかくて可愛いです。

 

ただ、共働き世帯も増えている中で「バスで帰宅するお父さんを、(街の中を)エプロンをつけたままのおかあさんが子供を連れてお迎えに行く」という描写がいまいち馴染まず、お気に入りとはなりませんでした。レトロ調なので、昔の風景を表現しておりそれはそれで自然なのでしょうけれど。(あくまで我が家で馴染まなかっただけです)

 

ご参考までに。

【キャリア】それはご配慮ですか?

「もう少し、家庭を大事にした方がいいんじゃないの。君はおこちゃまもいるし、家事もしないといけないんだからさぁ」

 自分の常識は、世間の非常識なのだろうか。そんなことに目くじらをたててと眉を顰められるだろうか。神経質だと距離をとられるだろうか。聞き流してニコニコしていればよかっただろうか。

言われた瞬間に感じたのは、目の前が真っ赤になるかと思うほどの怒りだった。しかしその感情はすぐに鎮火して、襲ってきたのは無力感だった。仕事を頑張っても結局、かけられることばは激励でも労いの言葉でもなく、嗜めと親切ごかした「ご配慮」の言葉である。

働く母親は、職場では申し訳なさそうに縮こまっていないといけないのだろうか。

 

育休からフルタイムで復帰してはや3か月。ようやくもようやくだが、仕事が軌道に乗ってきただろうか、と思い始めた時期であった。休業前とは全く異なる、新しい仕事。右も左も分からないながら、関係先との顔つなぎが済み、どんな成果を求められているかがわかってきたところであった。息子の発熱も頻度がさがり、主人や地域の力を借りて、突発欠勤をすることのない体制を整備できたことで「普通に」仕事を任せてもらえるようになっていた。

そんな矢先に起こった職場での大規模トラブル。私を含め、所属するチームメンバーは全員日夜問わず、土日休日問わずの対応を求められた。なんとか事態が収束し、一息ついたところでなぜか私だけが名指しで残業を咎められ、冒頭の言葉をかけられるに至る。

上司にアサインされた業務、指示を受けた残業、休日出勤だったにも関わらず。

 

私は育休から復帰するにあたって、会社からは「こどもがいるのはみんな一緒。特別扱いはできない」と言われてきたし、特別扱いを要請したこともない。それなのにご丁寧に「ご配慮」だけは賜るのだ。生まれて間もないこどもがいる男性社員にはないその「ご配慮」は、女性であれば黙って飲み込まなければいけない類のものなのだろうか。その言葉を直接かけてきたのは斜め上の上司だったが、「育児をしながら、仕事も頑張りたい」という私を応援してくれていた上司まで、その言葉に感化されて「ちょっと抑えなさい」と言い出す始末だ。

育児も家事も、性別問わず家庭に所属するすべての大人に責任が発生することだ。もちろん仕事も同じである。

周囲のサポートも受けながら「育児がしたい、けれど仕事もしたい頑張りたい、出来ることならキャリアを積み重ねていきたい」と思い、それに向かって家庭をやり繰りしながら努力することは、はたから見ると見苦しいのだろうか。

 

大きなトラブル対応を終えて、達成感に肩を叩きあう同僚を横目に、いま私は途方に暮れている。ぱしっと心の折れる音が、聞こえた気がした。