ぶきっちょさんの共働き入門

2021年夏より家族でアメリカ居住。異国暮らしとキャリア断絶について考える日々

【夫婦のかたち】アンサングシンデレラではいたくない

家事に従事する妻は、縁の下の力持ちなのであろうか。

 

「アンサングヒーロー」という言葉を初めて知った。フジテレビドラマ「アンサングシンデレラ」(普段あまり脚光をあびることのない薬剤師たちが病院を舞台に大活躍する話である)を見たときだった。アンサングとは歌われることのない、褒めたたえられることのないという意味らしい。

称えられることのない英雄、縁の下の力持ち。

「実はとっても重要な役回りだけど、普段はあなたの活躍は目に見えないのよね、改めてお礼を言うわ、ありがとう!」

そんな存在はとても高潔でカッコいいとは思うけれど、自分がなりたいとは思わない。

 

こんなことがあった。

なぜか日用品の切れるタイミングというのは重なるもので、コンディショナーやら洗濯洗剤やら主人の洗顔フォームやら息子の石鹸やら、ありとあらゆる液体を脱衣場でせっせと詰め替えていた。

ボトルの下には使用済みのバスタオルを引いて、入れすぎてこぼさないよう細心の注意を払う。もったいないという理由もあるけれど、片付けというさらなる家事を増やさないためだ。かといって少なすぎると次回の詰め替え時期が早く来てしまう。ボトル、洗剤、そして私。ぎりぎりの攻防である。

息子が起きている時間にそんなことをすれば大惨事になるので、寝静まった深夜、ちょっと冷え込む脱衣場で、中腰でかがみこんで。

珍しく夜更かしをしていた主人が歯みがきをするために脱衣場にやってきて、私の様子をみてしみじみと言ったのだ。

「縁の下の力持ちだねえ。君は隠れてそんなことをしてくれてるんだねえ」

・・・はて。

これには一瞬無言になってしまった。

 

「いやいやいやいや、隠れてないけど!縁の下じゃないよ、上だよ上。ないと困るのは目に見えて分かることでしょう!」

 

私は縁の下で支えているつもりもなければ、隠れているつもりもなく、きちんとやらなければみんなが不自由する大事な仕事だと思っていた。そして感謝されているとも。だって詰め替え作業はかなり億劫ではないか。

コンディショナーが切れたままにしていたら、必要以上にじゃぶじゃぶボトルをゆすいでなけなしのコンディショナーを使うという手間が増えるし、洗剤を補充しなければ、出がけの急いでいるときに洗濯機をセットすることができず、洗濯物は山のまま嫌な匂いを放ち、いざ洗濯しても嫌な匂いが残ったりするではないか。

ほら、可及的速やかに行わなければいけない重要案件だ!

しかし実際に日用品の詰め替え作業をやったことのない人にとっては、いつの間にか行われている「存在する認識していないしごと」なのであった。なんて報われないのであろう。

 

感謝してほしいし、褒めたたえてほしい。

私は高潔でもなければカッコよくもないので、日々の努力を認められたいのである。そして一番認めてほしいのは主人だ。

そう伝えたところ、小さな声で「だって地味・・・」とつぶやいた後、気持ちを切り替えたのか盛大に褒めたたえてくれた。

俗であろうがカッコ悪かろうが、このほうが夫婦仲は円満なのだった。